Kubernetesは「コンテナオーケストレーター」という元々の役割を超えた。2026年、CNCFの最新調査によれば96%の組織がKubernetesを本番環境で使用または評価中であり、K8sはVM、サーバーレス関数、AI/MLパイプライン、エッジデバイスを統合管理する「ユニバーサル制御プレーン」へと進化している。Kubernetes 1.33ではGPU共有スケジューリングによりAIワークロードのコストを最大60%削減し、KEDA 3.0は80以上のイベントソースに対応したスケールトゥゼロを実現した。本稿では、2026年のKubernetesエコシステムの全体像を俯瞰する。
ユニバーサル制御プレーンへの進化
2026年の最も重要なトレンドは、Kubernetesがコンテナオーケストレーションを超え、多様なワークロードを管理するユニバーサル制御プレーンとしての地位を確立したことである。
KubeVirtはKubernetes上でVMを管理することを可能にし、レガシーワークロードのコンテナ化なしでの統合を実現する。Knativeはサーバーレス関数のライフサイクル管理をK8sネイティブに提供する。さらにAI/MLパイプラインの管理、エッジデバイスの制御まで、K8sのAPIモデル(宣言的設定・コントローラーパターン・カスタムリソース定義)が事実上のインフラ管理標準となった。
この進化の意味は大きい。組織はコンテナ用、VM用、サーバーレス用、AI用にそれぞれ異なる管理プレーンを維持する必要がなくなる。Kubernetesという単一の抽象化レイヤーが、異種混合のインフラを統一的に制御する。
AI/MLワークロードの第一級サポート ― K8s 1.33
Kubernetes 1.33は、AI/MLワークロード支援において重要なマイルストーンとなった。高度なGPUスケジューリングと共有機能により、複数のワークロードがGPUリソースを効率的に利用できるようになり、AI訓練と推論のコストを最大60%削減する。
GPUがデフォルトのハードウェアパラダイムになるにつれ、Kubernetesの従来の「ゴールデンシグナル」(CPU使用率、メモリ使用量)は変化を迫られている。GPU使用率、VRAMアロケーション、推論レイテンシといったAI固有のメトリクスが、K8sの可観測性スタックに組み込まれる必要がある。
OpenTelemetryは、Kubernetesアプリケーションからトレース、メトリクス、ログを収集するための標準として確立された。AI/MLワークロードの可観測性も、このOpenTelemetryの枠組みに統合されつつある。
KEDA 3.0とサーバーレスの融合
KEDA(Kubernetes Event-Driven Autoscaling)3.0は、80以上のイベントソース(Kafka、RabbitMQ、クラウドネイティブメッセージキュー等)に対応し、スケールトゥゼロ機能を提供する。間欠的なワークロードのコストを大幅に削減しつつ、イベント駆動型のスケーリングをK8sネイティブに実現する。
2026年のクラウドネイティブアーキテクチャは、「コンテナかサーバーレスか」の二者択一ではなく、両者をコヒーレントな戦略の中でオーケストレーションすることで定義される。Cloud RunやFargateのようなサーバーレスコンテナサービスが、コンテナとサーバーレスの間のギャップを埋める。長時間実行ワークロードにはコンテナ、バースト性の高いイベント駆動型タスクにはサーバーレスという使い分けが定着した。
Datadogのサーバーレスレポートによれば、AWS Lambdaの利用量は前年比100%以上の成長を記録しており、企業はマイクロサービスをFaaS(Function as a Service)にコスト管理とオートスケーリングの観点から移行し続けている。
エッジK8sと5G・IoT
エッジコンピューティング革命は、Kubernetesのデプロイメントを中央集権的なクラウドデータセンターの枠をはるかに超えて拡張している。2026年、K8sクラスタは分散エッジロケーション全体に展開され、IoTデバイス、5Gインフラ、ローカルデータ処理を管理する。
ハイブリッドエッジクラウド戦略が加速している。クラウド上で実行される集中型AIモデルと、エッジでの局所的意思決定を組み合わせるアプローチが採用される。エッジK8sは、低レイテンシが要求されるユースケース(自動運転、スマートファクトリー、リアルタイムビデオ分析)で不可欠なインフラとなっている。
LTSリリース議論とゼロトラストネットワーク
Kubernetesコミュニティでは、Long-Term Support(LTS)リリースの議論が本格化している。機密性の高い環境や規制産業でのK8s利用が拡大する中、現行の約4ヶ月ごとのリリースサイクルと短いサポート期間は、運用負荷とコンプライアンス要件の観点から課題を生んでいる。2026年にこの議論は大きく前進すると予測されている。
セキュリティ面では、更新されたNetworkPolicy APIがアイデンティティベースのアクセス制御をサポートし、K8sクラスタ内での真のゼロトラストアーキテクチャを実現する。業界全体のセキュアインフラへのシフトと整合する重要な進歩である。
2026年のKubernetesを一言で表すなら「収斂」である。コンテナ、VM、サーバーレス、AI/ML、エッジ――異種混合のワークロードがK8sという単一の制御プレーンに収斂する。96%の組織が採用し、もはや「使うかどうか」ではなく「どう使いこなすか」が問われる時代に入った。
FAQ
Kubernetes 1.33のAI/ML支援とは何か?
高度なGPUスケジューリングと共有機能を提供し、複数のワークロードがGPUリソースを効率的に共用できる。AI訓練・推論のインフラコストを最大60%削減する。従来のCPU/メモリ中心の監視に加え、GPU固有のメトリクスも統合される。
KubernetesでVMを管理できるのか?
KubeVirtプロジェクトにより、Kubernetes上でVMのライフサイクルを管理できる。レガシーアプリケーションをコンテナ化せずに、K8sの統一管理下に置くことが可能である。
KEDA 3.0とは何か?
Kubernetes Event-Driven Autoscaling 3.0は、80以上のイベントソースに対応したイベント駆動型オートスケーリングを提供する。スケールトゥゼロ機能により、ワークロードがない時のリソースコストをゼロに削減できる。
KubernetesにLTS(長期サポート)リリースはあるのか?
2026年2月時点では存在しないが、コミュニティで議論が本格化している。規制産業や機密環境での利用拡大に伴い、現行の短いサポート期間への不満が高まっており、2026年中に方向性が定まる可能性がある。
参考文献
- 2026 Container Predictions — DEVOPSdigest, 2026年
- Kubernetes News Today 2026 — Tasrie IT Services, 2026年
- Kubernetes Trends in 2026 — Jeevisoft, 2026年
- Cloud-Native, Serverless, and Edge Architectures Redefining Enterprise Agility in 2026 — ResolveTech, 2026年
- Serverless Architecture in 2026: How It Works, Benefits — Middleware, 2026年



