「2025 Fortra State of Cybersecurity Survey」によれば、40%の組織が既にサイバーセキュリティツールとベンダーの統合を開始し、さらに21%が計画中である。58%の組織が25以上のセキュリティツールを運用し、大企業では50以上に達することも珍しくない。IBMの調査では、組織は平均29ベンダーから83の異なるセキュリティソリューションを運用しているとされる。本稿では、この「ツール乱立」がブリーチ、監査不合格、対応遅延を直接引き起こしている現状を踏まえ、CISO/CTOが取り組むべきプラットフォーム集約とベンダー評価の実務フレームワークを提案する。

ツール分断がもたらす具体的損害

セキュリティシステムの複雑性は侵害コストを207,000ドル増加させる。断片化され統合が不十分なシステムは、迅速な対応を妨げるためである。過去10年間、セキュリティチームはあらゆる問題に対してツールを購入してきたが、2025年になって多くが気づいたのは、その結果が「ノイズ、疲労、盲点、コスト、そして拠点間で著しく一貫性のないカバレッジ」であったということである。

具体的な統計を見ると:

  • Verizon 2025 DBIR:GitHubリポジトリに漏洩したシークレットの修復までの中央値は94日
  • ヘルスケア侵害の検知・封じ込めまでの平均時間は279日(全体平均より約5週間長い)
  • ランサムウェア侵害の検知には他のインシデントより約49日長くかかる
  • 2025年Q1データでは、組織あたりの週間サイバー攻撃が前年比47%増加、ランサムウェアインシデントは126%急増
  • 46%の組織が攻撃によるアウテージまたはサービス中断を経験し、過去1年の平均インシデントコストは370万ドルと推計

VikingCloudのPCIおよびレディネス評価によれば、セグメンテーション、サードパーティ可視性、証跡収集が監査遅延およびコンプライアンス非適合の主要因となっている。断片化されたツール、一貫性のないコントロール、サイロ化された証跡収集を持つ組織は、高まる期待に応えることが困難になっている。

統合がもたらすメリットとROI

ツール統合のメリットは、単なるTCO(総保有コスト)削減を超える。ベンダーとツールの統合は、データストリームを集中化し、MTTD(平均検知時間)とMTTR(平均対応時間)を数分に短縮するための鍵となる。

具体的なメリットは以下の通りである:

  • 管理複雑性の削減: 単一または少数のベンダーとの関係管理
  • 学習曲線の短縮: チームが習得すべきツールの数を削減
  • 効率性の向上: 統合されたワークフローによる作業効率化
  • サポートの簡素化: ベンダーサポート窓口の一元化
  • コンプライアンスの簡素化: 統一された監査証跡と報告
  • ライセンス費用の最小化: 重複ツールの排除
  • メンテナンスコストの削減: 運用負荷の軽減
  • シェルフウェアの排除: 購入したが使われていないツールの特定と削除

ゼロトラストアプローチは、デフォルトで信頼を置かない姿勢により、侵害あたり平均176万ドルの節約を実現している。AWS、GCP、Azure、SaaSアプリにまたがるサイロ化されたツールに苦慮するセキュリティチームは、検知と対応を統一するプラットフォームの恩恵を受けられる。異なるクラウドソースからのイベントが自動的にスティッチングされることで、アナリストはインシデントの誰が、何を、いつ、どのようにを遅延なく把握できる。

プラットフォーマイゼーションの台頭

多くのサイバーセキュリティ専門家は、プラットフォーマイゼーションアプローチは一時的な流行ではなく、定着するトレンドであると考えている。プラットフォーマイゼーションが牽引力を得ているのは、統合の欠如と十分な可視性を提供しない多数の異種ツールという広範な問題への解決策だからである。

Gartnerは、2028年までに45%の組織が15未満のサイバーセキュリティツールを使用するようになると予測している(2023年はわずか13%)。Gartnerの2026年戦略テクノロジトレンドは、プリエンプティブ(先制的)サイバーセキュリティが正式に戦略的優先事項になったことを確認している。いかに早く検知または対応できるかではなく、高度な攻撃を完全に防止できるかが問われている。

優れたプラットフォームの要件:

  • 共有データレイクとシームレスなワークフローを備えた真に統一されたアーキテクチャ
  • 自社ベンダー以外の製品とも連携可能であること
  • ロックインリスクへの対策(プラットフォームが期待に応えない場合の移行コスト考慮)

2026年CISOの優先事項と予算配分

CISOは、より大きな予算、より多くのクラウド責任、そして急速に変化するAIとコンプライアンス環境を抱えて2026年に臨んでいる。Wiz 2026 CISO Budget Benchmark Reportによれば、CISOの約半数がクラウドの複雑性とツールの乱立がセキュリティプログラムを積極的に妨げていると述べている。リーダーたちは拡大から合理化へとフォーカスを移し、可視性を改善し、運用を簡素化し、無駄を削減する統合プラットフォームを求めている。

先進的なCISOは、廃止(デコミッショニング)を正式な予算項目として追加している。低価値ツールの廃止または統合により、自動化、分析、人材開発などの高収益イニシアチブへの資金を解放する。簡素化はコントロールの証である。

2026年には、より多くの取締役会がCISOにセキュリティエクスポージャーと投資を財務用語で説明するよう圧力をかけることが予想される。潜在的なドル損失やセキュリティ投資の実際のリターンなどの指標に焦点を当て、運用レジリエンスは取締役会の譲れない期待事項となっている。

プラットフォーム集約の実務フレームワーク

CISO/CTOがツール統合を進める際の実務フレームワークを以下に示す:

フェーズ1:現状評価(1-2ヶ月)

  • 全セキュリティツールのインベントリ作成
  • 各ツールの利用状況、カバレッジ、重複の分析
  • シェルフウェア(購入したが使われていないツール)の特定
  • 現在のMTTD/MTTRのベースライン測定

フェーズ2:戦略策定(1-2ヶ月)

  • 「あるべき姿」のセキュリティアーキテクチャ定義
  • プラットフォーム vs ベスト・オブ・ブリードの判断基準設定
  • ベンダー評価基準の策定(統合性、拡張性、ロックインリスク)
  • 廃止候補ツールのリストアップ

フェーズ3:パイロットと移行(3-6ヶ月)

  • 選定プラットフォームのPoCデプロイ
  • 既存ツールからのデータ移行計画
  • チームトレーニングとプロセス変更
  • 段階的なツール廃止

フェーズ4:継続的最適化(継続)

  • MTTD/MTTRの継続的測定と改善
  • 新たなツール導入時の統合性評価
  • 定期的なツールポートフォリオレビュー

FAQ

ツール統合と「ベスト・オブ・ブリード」アプローチはどちらが優れているか?

一概には言えないが、2025-2026年のトレンドは統合に傾いている。ベスト・オブ・ブリードは各機能で最高のツールを選択できるが、統合コスト、データサイロ、運用複雑性が課題。プラットフォームは統合性と運用効率に優れるが、ベンダーロックインのリスクがある。多くの組織はハイブリッドアプローチ(コアプラットフォーム+限定的な専門ツール)を採用している。

ツール統合はセキュリティを弱体化させないか?

適切に実施すれば弱体化しない。統合により可視性が向上し、アラート疲労が減少し、対応速度が向上する。ただし、統合時の移行リスク管理と、選定プラットフォームのカバレッジ確認が重要。統合は「ツール数を減らす」ことではなく「能力を集約する」ことが目的である。

どのくらいのツール数が適切か?

Gartnerは2028年までに45%の組織が15未満のツールを使用すると予測している。しかし適切な数は組織規模、業界規制、リスクプロファイルにより異なる。重要なのは「数」ではなく「統合性」と「可視性」である。76ツールを持つ組織でも、統合されたデータレイクと統一ワークフローがあれば効果的に運用できる。

廃止すべきツールの見分け方は?

利用率が低い(ログイン頻度、アラート対応率)、他ツールと機能が重複している、統合が困難、ROIが不明確、ベンダーサポートが不十分なツールが廃止候補となる。廃止前に、そのツールがカバーしていた能力が別のツールでカバーされることを確認する。

参考文献