調査期間:2025年2月〜2026年2月(52週間)
データソース:GitHub API(stats/participation, repos endpoint)
取得日:2026年2月4日
AI系オープンソースプロジェクトの勢力図は、この1年で大きく変化した。本レポートでは、GitHub APIから取得した実データに基づき、主要10プロジェクトのコミット活動・スター数を分析する。ニュースや印象論ではなく、数字が語る現実を提示する。
エグゼクティブサマリー
コミット増加率
コミット減少率
Q4コミット数
主要な発見:
- インフラ層が勝者:推論最適化(vLLM, llama.cpp)とAPI統合(LiteLLM)が急成長
- フレームワーク層は停滞:LangChain, LlamaIndexのコミット活動は大幅減少
- エージェント・ハイプの終焉:AutoGPTは低空飛行、AutoGenは事実上の開発停止
現在のスター数ランキング
まず、2026年2月時点のGitHubスター数を確認する。スター数は「関心度」の指標であり、実際の利用状況とは必ずしも一致しない点に注意が必要だ。
| 順位 | プロジェクト | スター数 | フォーク | カテゴリ |
|---|---|---|---|---|
| 1 | AutoGPT | 181,687 | 46,299 | エージェント |
| 2 | Ollama | 161,617 | 14,432 | ローカル推論 |
| 3 | Transformers | 156,130 | 31,943 | ML基盤 |
| 4 | LangChain | 125,875 | 20,706 | オーケストレーション |
| 5 | llama.cpp | 94,331 | 14,751 | ローカル推論 |
| 6 | vLLM | 69,414 | 13,161 | 推論最適化 |
| 7 | AutoGen | 54,244 | 8,178 | エージェント |
| 8 | LlamaIndex | 46,773 | 6,778 | RAG |
| 9 | CrewAI | 43,584 | 5,849 | エージェント |
| 10 | LiteLLM | 35,155 | 5,612 | API統合 |
AutoGPTが18万スターで首位だが、これは2023年のハイプ期に獲得したもので、現在の開発活動とは乖離している。重要なのはスター数ではなくコミット活動だ。
年間コミット数 ── 開発モメンタムの実態
過去52週間のコミット数は、プロジェクトの「生きた活動」を示す。
| プロジェクト | 年間コミット | 週平均 | 評価 |
|---|---|---|---|
| LiteLLM | 12,217 | 235 | 🚀 爆発的成長 |
| vLLM | 9,147 | 176 | 🚀 高成長 |
| Transformers | 3,959 | 76 | 📊 安定 |
| llama.cpp | 3,289 | 63 | 🚀 成長中 |
| LangChain | 2,653 | 51 | ⬇️ 減速 |
| LlamaIndex | 1,520 | 29 | ⬇️ 大幅減速 |
| AutoGPT | 1,443 | 28 | 📊 低空飛行 |
| Ollama | 1,208 | 23 | 📊 安定 |
| CrewAI | 821 | 16 | ⬇️ 減速 |
| AutoGen | 564 | 11 | ☠️ 開発停止 |
LiteLLMの年間12,217コミットは、LangChainの4.6倍である。スター数では10位のLiteLLMが、コミット活動では圧倒的な1位という逆転現象が起きている。
四半期推移 ── トレンドの方向性
年間合計だけでなく、四半期ごとの推移を見ることで、プロジェクトが「上り坂」か「下り坂」かが分かる。
| プロジェクト | Q1 2025 | Q2 2025 | Q3 2025 | Q4 2025-Q1 2026 | Q1→Q4 変化率 |
|---|---|---|---|---|---|
| LiteLLM | 2,465 | 2,093 | 3,189 | 4,470 | +81% |
| llama.cpp | 660 | 797 | 854 | 978 | +48% |
| vLLM | 1,879 | 1,999 | 2,671 | 2,598 | +38% |
| Transformers | 929 | 1,043 | 1,122 | 865 | -7% |
| AutoGPT | 316 | 388 | 427 | 312 | -1% |
| LangChain | 726 | 639 | 765 | 523 | -28% |
| Ollama | 429 | 190 | 300 | 289 | -33% |
| CrewAI | 270 | 180 | 204 | 167 | -38% |
| LlamaIndex | 450 | 514 | 355 | 201 | -55% |
| AutoGen | 393 | 128 | 43 | 0 | -100% |
勝者と敗者の分析
🚀 勝者:インフラ層
LiteLLMは、複数のLLM APIを統一インターフェースで呼び出すライブラリだ。企業がマルチベンダー戦略を取る中で、抽象化レイヤーの需要が急増している。Q4のコミット数4,470は、同期間のLangChain(523)の8.5倍である。
vLLMとllama.cppは、推論コスト削減のニーズに応えている。クラウドAPI料金の高騰を背景に、自社運用やエッジ推論への移行が進んでいる。
⬇️ 敗者:オーケストレーション層
LangChainとLlamaIndexは、2023-2024年にRAGブームの恩恵を受けたが、その勢いは明らかに衰えている。理由として考えられるのは:
- LLMプロバイダ自身がRAG機能を統合(Anthropic Claude、OpenAI Assistants API)
- 抽象化の複雑さへの反発(「LangChainなしで書いた方がシンプル」問題)
- RAGの限界が認識され、ファインチューニングへの回帰
☠️ 終焉:エージェント・ハイプ
AutoGenのQ4コミット数はゼロである。MicrosoftはAutoGenを事実上放棄し、別プロジェクトに注力している可能性が高い。AutoGPTもスター数こそ18万だが、コミット活動は低調で、2023年のハイプの遺産を食いつぶしている状態だ。
「AIエージェントは次のパラダイム」という物語は、少なくともOSSコミュニティでは勢いを失っている。
示唆と予測
企業への示唆
- LangChain依存を見直す:コミット活動の減速は、将来のメンテナンスリスクを示唆する。軽量な代替(LiteLLM + 自前コード)を検討すべき
- 推論インフラに投資する:vLLM、llama.cppの成長は、API依存からの脱却トレンドを反映している
- エージェント・ツールは慎重に:AutoGen、CrewAIの停滞は、技術的成熟度の不足を示している
2026年後半の予測
- LiteLLM:スター数でLlamaIndexを抜き、トップ5入りする可能性
- LangChain:大規模リファクタリングか、LangChain v2 的な刷新がなければ衰退継続
- 新興勢力:Claude Code、Cursor等のAI Coding Assistantが新たなカテゴリを形成
調査方法
本調査は以下の方法で実施した:
- データ取得:GitHub API v3(
/repos/{owner}/{repo}、/repos/{owner}/{repo}/stats/participation) - 取得日時:2026年2月4日 15:00 JST
- 対象期間:過去52週間(2025年2月〜2026年2月)
- 四半期区分:Q1=週1-13、Q2=週14-26、Q3=週27-39、Q4=週40-52
- 選定基準:AI/LLM関連で1万スター以上のプロジェクトから代表的な10件を選定
生データはGitHub APIから直接取得しており、サードパーティの集計サービスに依存していない。
参考文献
- GitHub REST API - Repositories — GitHub Docs
- GitHub REST API - Repository Statistics — GitHub Docs
