調査期間:2025年2月〜2026年2月(52週間)
データソース:GitHub API(stats/participation, repos endpoint)
取得日:2026年2月4日

AI系オープンソースプロジェクトの勢力図は、この1年で大きく変化した。本レポートでは、GitHub APIから取得した実データに基づき、主要10プロジェクトのコミット活動・スター数を分析する。ニュースや印象論ではなく、数字が語る現実を提示する。

エグゼクティブサマリー

+81%
LiteLLM
コミット増加率
-55%
LlamaIndex
コミット減少率
0
AutoGen
Q4コミット数

主要な発見

  • インフラ層が勝者:推論最適化(vLLM, llama.cpp)とAPI統合(LiteLLM)が急成長
  • フレームワーク層は停滞:LangChain, LlamaIndexのコミット活動は大幅減少
  • エージェント・ハイプの終焉:AutoGPTは低空飛行、AutoGenは事実上の開発停止

現在のスター数ランキング

まず、2026年2月時点のGitHubスター数を確認する。スター数は「関心度」の指標であり、実際の利用状況とは必ずしも一致しない点に注意が必要だ。

順位プロジェクトスター数フォークカテゴリ
1AutoGPT181,68746,299エージェント
2Ollama161,61714,432ローカル推論
3Transformers156,13031,943ML基盤
4LangChain125,87520,706オーケストレーション
5llama.cpp94,33114,751ローカル推論
6vLLM69,41413,161推論最適化
7AutoGen54,2448,178エージェント
8LlamaIndex46,7736,778RAG
9CrewAI43,5845,849エージェント
10LiteLLM35,1555,612API統合

AutoGPTが18万スターで首位だが、これは2023年のハイプ期に獲得したもので、現在の開発活動とは乖離している。重要なのはスター数ではなくコミット活動だ。

年間コミット数 ── 開発モメンタムの実態

過去52週間のコミット数は、プロジェクトの「生きた活動」を示す。

プロジェクト年間コミット週平均評価
LiteLLM12,217235🚀 爆発的成長
vLLM9,147176🚀 高成長
Transformers3,95976📊 安定
llama.cpp3,28963🚀 成長中
LangChain2,65351⬇️ 減速
LlamaIndex1,52029⬇️ 大幅減速
AutoGPT1,44328📊 低空飛行
Ollama1,20823📊 安定
CrewAI82116⬇️ 減速
AutoGen56411☠️ 開発停止

LiteLLMの年間12,217コミットは、LangChainの4.6倍である。スター数では10位のLiteLLMが、コミット活動では圧倒的な1位という逆転現象が起きている。

四半期推移 ── トレンドの方向性

年間合計だけでなく、四半期ごとの推移を見ることで、プロジェクトが「上り坂」か「下り坂」かが分かる。

プロジェクトQ1 2025Q2 2025Q3 2025Q4 2025-Q1 2026Q1→Q4 変化率
LiteLLM2,4652,0933,1894,470+81%
llama.cpp660797854978+48%
vLLM1,8791,9992,6712,598+38%
Transformers9291,0431,122865-7%
AutoGPT316388427312-1%
LangChain726639765523-28%
Ollama429190300289-33%
CrewAI270180204167-38%
LlamaIndex450514355201-55%
AutoGen393128430-100%

勝者と敗者の分析

🚀 勝者:インフラ層

LiteLLMは、複数のLLM APIを統一インターフェースで呼び出すライブラリだ。企業がマルチベンダー戦略を取る中で、抽象化レイヤーの需要が急増している。Q4のコミット数4,470は、同期間のLangChain(523)の8.5倍である。

vLLMllama.cppは、推論コスト削減のニーズに応えている。クラウドAPI料金の高騰を背景に、自社運用やエッジ推論への移行が進んでいる。

⬇️ 敗者:オーケストレーション層

LangChainLlamaIndexは、2023-2024年にRAGブームの恩恵を受けたが、その勢いは明らかに衰えている。理由として考えられるのは:

  • LLMプロバイダ自身がRAG機能を統合(Anthropic Claude、OpenAI Assistants API)
  • 抽象化の複雑さへの反発(「LangChainなしで書いた方がシンプル」問題)
  • RAGの限界が認識され、ファインチューニングへの回帰

☠️ 終焉:エージェント・ハイプ

AutoGenのQ4コミット数はゼロである。MicrosoftはAutoGenを事実上放棄し、別プロジェクトに注力している可能性が高い。AutoGPTもスター数こそ18万だが、コミット活動は低調で、2023年のハイプの遺産を食いつぶしている状態だ。

「AIエージェントは次のパラダイム」という物語は、少なくともOSSコミュニティでは勢いを失っている。

示唆と予測

企業への示唆

  1. LangChain依存を見直す:コミット活動の減速は、将来のメンテナンスリスクを示唆する。軽量な代替(LiteLLM + 自前コード)を検討すべき
  2. 推論インフラに投資する:vLLM、llama.cppの成長は、API依存からの脱却トレンドを反映している
  3. エージェント・ツールは慎重に:AutoGen、CrewAIの停滞は、技術的成熟度の不足を示している

2026年後半の予測

  • LiteLLM:スター数でLlamaIndexを抜き、トップ5入りする可能性
  • LangChain:大規模リファクタリングか、LangChain v2 的な刷新がなければ衰退継続
  • 新興勢力:Claude Code、Cursor等のAI Coding Assistantが新たなカテゴリを形成

調査方法

本調査は以下の方法で実施した:

  • データ取得:GitHub API v3(/repos/{owner}/{repo}/repos/{owner}/{repo}/stats/participation
  • 取得日時:2026年2月4日 15:00 JST
  • 対象期間:過去52週間(2025年2月〜2026年2月)
  • 四半期区分:Q1=週1-13、Q2=週14-26、Q3=週27-39、Q4=週40-52
  • 選定基準:AI/LLM関連で1万スター以上のプロジェクトから代表的な10件を選定

生データはGitHub APIから直接取得しており、サードパーティの集計サービスに依存していない。

参考文献